諏訪敦彦監督 舞台挨拶のご報告


3月15日に今年度最後のうえだ子どもシネマクラブの上映を行いました。この日は『風の電話』の諏訪監督にもご来場いただき、上映後、舞台挨拶を行っていただきました。



今年は東日本大震災から10年が経ちました。

この10年を振り返りながら、日本を取り巻く環境、そして震災を題材に映画を撮るということについて、また実際の撮影現場についてなど、じっくりお話を伺いました。

諏訪監督が『風の電話』を撮り始めたのは震災から8年が経った時だったそうです。「震災当時、被災地にはなぜか行かなかった」と語る諏訪監督。8年後のその時に初めて東北の地を訪れたといいます。「当時行けば、何かは撮れたかもしれない。でも、いかなかった。」「8年経過すると、何も何も見えなくなっていた。実際、駅前も綺麗に整備されて、三陸鉄道が全線開通した時でした。街は綺麗になっていたけど、人の心の中は建物のように簡単にはいかない。」

実在する「風の電話」をモチーフ描かれた作品ですが、震災で家族を失った17歳のハルが、いろんな人に出会いながら、この日本で起きているたくさんの「みえないもの」や「みえない存在」に出会っていく。そして最後に亡くなった家族と「風の電話」を通じて対話する。

“喪失と再生”なんていってしまうと、あまりに軽く感じてしまうほどですが、形のない、みえないものの存在によって、もう一度歩き出すエネルギーを貯めていくハルの姿に、来場していただいた皆様からもたくさんの感想が寄せられました。


・と中で出てくるセリフの「お前が死んだら誰が家族を思い出すんだ」のセリフが一番好きなセリフですごいひびきました。

・ハルちゃんという、東日本大震災で家族を亡くした”特別な”子の話を見に来たつもりが、まるで自分の人生のように感じられました。

・当時の記憶をたどりながら、現代の日本をさまざまな視点で鑑賞できました。

・せつなかったけど、さいごに「おはなしできてよかったな。」とおもいました。

ラストの電話ボックスでのハルの言葉は、モトーラさん自身から出された言葉だったそうです。ハルと共に旅をしたからこそ生まれる言葉と感情。

監督は、そうして描かれた作品を受け取るわたしたち一人一人の中で感情が再び生まれ、この映画は完成すると諏訪監督はお話されていました。


舞台挨拶後も、ロビーで質問やお話が止まりませんでした。

映画だから伝わること、気づくことが本当にたくさんです。


ご来場いただきました諏訪敦彦監督、本当にありがとうございました!